福井市に位置する商店街。
戦後のバラック街から、その姿を変化させて今にまで続く歴史と文化の継承地。その商店街の一部を集合リノベーションの形で蘇らせるプロジェクト。
福井の中心であり、かつて人々・時間・暮らしの流れが賑やかに行き交う「古道」であったこの場所が、再び鼓動を打ち始められるようにと願いを込めて。
光のダクトが生み出すアート性と機能性
本物件が位置する商店街は、古い長屋が連続的に立ち並び、向かい合う建物の間を貫く歩道は狭く、その上部を簡易的な屋根が囲うような構造をしている。
それによって、外からの光が入りにくく、老朽化した屋根・建物が醸し出す雰囲気も相まって、どんよりとして暗い印象を与えており、周辺住民の声からも、その暗い印象が足を遠ざける要因となっていることが判明した。
そこで、商店街の南端に位置する本物件を通じて、「わずかな日光を商店街の中に引き込むことができないか?」というアイデアが生まれた。
それ自体が建物の外観を特徴づけながら、採光のとれる箇所の日光をダクト内に反射させることで、屋根のかかった商店街の奥のテナントまで引き込み、柔らかく温かな自然光を取り込むことを発案。
陰鬱でエネルギーを感じにくかった過去から、再び生命力に満ちた鼓動を打ち始めることのできる場所へとリデザインするアイデアだ。
長屋特有の防災対策を一つの表現に昇華
古くから増改築を進めてきた本物件(および本商店街)は、木造の建物も多く、高密度で立ち並んでいることからも、火災・延焼のリスクが非常に高いことが懸念された。
そこで、日常的には本物件が人々の憩いの場であり、新たな活力を得られる場として機能するため、井戸水を用いた水場を長屋の中央に設けながら、それが各テナントへ水を供給しスプリンクラーによる防火機能も果たすというシステムを考えた。
スプリンクラーは、設置したソーラーパネルによる発電によって作動させることで、必要以上のコストを抑えつつ、日々の安全性を担保することを目指した。
また、本物件の正面部分を全体的にセットバックさせることで、半屋外空間を作り出し、各テナントの利用客による賑わいを外に伝えつつ、非常時の避難の混在を軽減、退路を確保しやすくするという効果の両立を狙った。

